前編をご覧になられた方、いかがでしたでしょうか1?

牧場の誕生に関するルーツが垣間見れたのではないでしょうか。

また、『A5』ランクにこだわる業界の常識を覆すべく、味にこだわりを持ち続ける小国さんの熱意溢れるトークはいかがでしたでしょうか。

後編では、味に対して試行錯誤を続けてきた小国さんだからわかる美味しい味の牛の育て方に関する秘訣を教えていただきたいと思っております。

それでは後編もお楽しみください。

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小国さんが考える「牛の育て方」とは、A3とかA5ではなく、あくまで美味しさにこだわるということでしたね!?

そうなんです。

今その美味しさを図る指標として、牛肉に含まれる「オレイン酸」の濃度が図れる数値があるのですが、味に割と直結してるので、そのオレイン酸の数値が高ければ、美味しい肉であると言われています。

全国的にも牛肉の高級和牛の新しい基準として、オレイン酸値を公表するところが県レベルで増えてきています。

うちはただただ、美味しさを目指して、僕の感覚とお客さんの反応を見て、牛を育ててきたんです。

オレイン酸が高くなることを目指して作っている訳ではないんですけど、結果としてオレイン酸が高いのが出来てきていて、今ではそれが間違いではなかったことが数値を通して再確認できました。

それがA5だからオレイン酸の数値が高いのかって言われると全くそんなことはないんですよ。

A3でもA5でもランクに関係なく、うちの牛達っていうのはオレイン酸のパーセンテージが一般的なブランド牛よりも高いんです。

 

一般的なオレイン酸の数値ってどのような基準なんですか?

オレイン酸の数値は「55」を超えれば良い肉って言われていて、たとえば滋賀県で公表している近江牛とかで「57」。

うちの60」前後のものばかりです。

世の中はまだ食肉格付けというA5が最高という基準が、牛肉界のイメージを司っています。

戦後に制定された制度なんですが、日本の食文化や嗜好にあわせて制度が見直されてきたという経緯が一切ない制度なんですよね。

なのでA5の肉が食べておいしい肉という世の中のイメージに疑問を持っている人が増えてきている印象はありますね。インターネットの記事でも見かけることも多くなってきましたし。

だけど、じゃあどうやってその牛の良しあしを判断したらいいのかというと、今後はオレイン酸値が味の指標として信頼できるものなんじゃないかと思います。

圧倒的に世の中の人は「A5」の肉が最高級だと思ってるいるから、「和牛はA5を食べたい」と洗脳されている部分があります。

ミシュランガイドにのっているレストランにうちが提供することって多いんですけど、そのことを肌で感じているのか、格付けにとらわれず一度食べてみたらリピートしてくれるから、またそのシェフがおぐにの味を広めようと他のシェフに勧めてくれるという連鎖が起こっています。

 

餌に対して何か気をつけていることはございますか?

僕が今気をつけているのは、コーンに頼らないってことですね。

コーンを食べさせるとサシも入るし、肉質もよくなるので、一見効率はいいんです。

今の畜産において、合理的に良い肉をつくる為にはトウモロコシなんですが、僕的に違和感を感じるのが、すき焼きでも照り焼きでも今のハンバーグソースでもステーキでもそうだけど、日本人の食べ物って醤油ベースな訳じゃないですか。肉の脂分は飼料の脂分で決まります。っていうことは醤油ベースの味付けにトウモロコシの脂分となると、僕はバッティングすると思っているので、だから大豆を押すんですよね。

大豆の脂のほうが良質で良いってのはわかっているんですけど、生産者は高いから使いたがらないんです。そして配合が難しい。

僕は日本の文化にはあんまりトウモロコシを押している肉だと今のイタリアンでも和食でもバッティングすると思うんですよね。

ホントにアメリカの牛肉みたいにコーンスープ飲みながら、ポテト食べながら、「ガッツリ」食べるんだったらそれで良いんですけどね。

 

美味しい肉を作る秘訣を教えてください。

長年試行錯誤を続けてきたんですが最初ずっと大豆を多めにしておりました。

しかしそれでは、美味しいものが出来てもコストばかりかかるのでお手上げだったんです。

僕が研究した結果、脂の質が変わるのは、最短2カ月飼料を変えればいいのですが

そこを僕の場合は3ヶ月~4ヶ月かけてゆっくりやります。

若い時期はしっかり体をつくり、たんぱくを与え、極端な事を言えば、最後の3ヶ月を人間の舌に合うように変えていくと牛の味も変わっていくんです。

これは消費者と直結しているからこそ、気が付くんです。

皆、日本人は、味噌汁食べながらご飯食べるんだから、そういう日本の食文化に合った牛肉づくりを目指しています。それが和牛の良さだと思います。

それは今でもまだ苦労している部分ではあるんですけどね。

 

他に試したものはございますか?

良かれと思うものは、ありとあらゆるものを試しました。

具体的にはそれをやってる人もいるので言えませんが()

やみくもに餌の中身を変えても、肉の味に直結しないということがわかり、それからは、自分で食べておいしいと思えたものを数パーセントの割合で調整しました。

食べる人の基準があって、それに合わせた味にすることができるのかっていうと、ぼくにはできるっていう自信はあります。

普通の畜産農家だと「こういう味にして欲しい」って言われても、自分の育てた牛の味すらもわからない人が味を調整できるかというと、そりゃできないと思いますけどね。

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⇒⇒⇒⇒⇒ 後編に続く ⇒⇒⇒⇒⇒

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いかがでしたでしょうか。

次回は連載の最後となりますが、『共同開発編』となります。

乞うご期待★